タスクに優先順位をつける — 重要度と緊急度を実際に運用する
重要度×緊急度のマトリクスがなぜ実務で機能しないかを整理し、MITと予定表への組み込みで実際に運用できる形に直す方法を解説する。
タスクリストに20項目並んでいて、そのうち8割に自分で「重要」と印をつけている。これは優先順位づけの失敗としてよくある光景だ。重要度と緊急度でタスクを4象限に分けるマトリクスは広く知られているが、多くの人が一度紙に書いて終わり、翌日には元の順番でこなし始める。道具の問題ではなく、運用の仕方に原因がある。
重要度×緊急度のマトリクス※1は分類の道具であって、優先順位を自動で決めてくれる装置ではない。多くの項目が「緊急かつ重要」に集まってしまうのは、締切までの作業時間を過小評価する傾向※2が影響している。マトリクスを機能させるには、毎日1〜3個の最重要タスク(MIT)に絞り込み※3、それを予定表の時間枠として確保する運用に落とし込む必要がある。
マトリクスを書いても順番が変わらない理由
重要度と緊急度で4象限に分けるこの手法は、Stephen Coveyが『7つの習慣』で体系化し、Dwight D. Eisenhowerの発言に由来するとされている※1。第1象限「緊急かつ重要」、第2象限「重要だが緊急でない」、第3象限「緊急だが重要でない」、第4象限「どちらでもない」という分類自体は理解しやすい。問題は、実際にタスクを書き出すと大半が第1象限に吸い寄せられてしまうことだ。分類の基準があいまいなまま「なんとなく大事そう」で印をつければ、マトリクスはただの装飾になる。
第1象限に集まりすぎる、もう一つの理由
タスクが緊急に見えるのは、締切までの作業時間を実際より短く見積もっているケースが多いためでもある。Kahneman and Tversky が指摘した計画錯誤(planning fallacy)は、人が過去の同種の失敗を経験していてもなお、完了までの時間を楽観的に見積もる傾向を示している※2。着手が遅れた結果として「気づけば緊急」になっているタスクは、本来は第2象限で早めに手をつけるべきだった仕事であることが少なくない。マトリクスの精度は、見積もりの精度に直結している。
運用に落とす — 毎日3つのMITと、予定表への確保
実務でマトリクスを機能させる一つの方法は、分類そのものを毎日の細かい作業にせず、朝いちばんに「今日中に終わらせるべき最重要タスク(Most Important Task)」を1〜3個だけ選ぶことだ。Leo Babautaが提唱したMITの考え方は、選択肢を絞ることで実行に移す確率を上げる※3。選んだMITは付箋やリストに置くだけでなく、実際にカレンダー上の時間枠として確保する。第2象限の仕事が第1象限に転落する前に潰す、という発想は、一日の時間割設計とも直結しており、詳細は一日の仕事を設計するで扱っている。
もっとも、マトリクスが向かない働き方もある
もっとも、この手法がうまくいかない職種や状況もある。顧客対応や障害対応のように、他人の緊急度に自分の一日が左右される仕事では、第2象限に時間を確保する余地そのものが小さい。その場合はマトリクスを1日単位でなく週単位・案件単位で運用し、「緊急対応の合間に週2回、30分だけ重要タスクに充てる」といった現実的な妥協が必要になる。優先順位づけは、収集・整理・レビューという土台があって初めて安定する。土台の作り方は個人の生産性システムを組み立てるで解説した。
次の一歩
優先順位づけは単独では完結しない。収集と整理の土台については個人の生産性システムを組み立てるを、選んだMITを一日の時間割にどう落とし込むかは一日の仕事を設計するを参照してほしい。実際に手を動かしながら優先順位づけを練習したい場合は、ディープワーク基礎講座の講座ページも参考になる。
参考文献
- Stephen R. Covey. "The 7 Habits of Highly Effective People." Free Press, 1989. (Time Management Matrix)
- Daniel Kahneman and Amos Tversky. "Intuitive Prediction: Biases and Corrective Procedures." TIMS Studies in Management Science, 1979.
- Leo Babauta. "Zen to Done (ZTD)." zenhabits.net、Most Important Task(MIT)の概念。
関連する記事
Deep Work Systems
会員登録で、フルコースとニュースレターを受け取る
無料の記事だけでも実務に役立つ内容を目指していますが、会員登録いただくと、 実践講座の詳しい内容と、新着チュートリアル・更新情報のニュースレターをお届けします。 登録は無料です。メールアドレスは配信目的のみに使用し、第三者へ提供することはありません。