ポモドーロ・タイムブロック・フロー — 集中法を目的別に比べる
ポモドーロ・タイムブロッキング・フローという三つの集中アプローチを、向く場面と向かない場面に分けて比較する。唯一の正解は存在しない。
「集中するにはどの方法がいいか」という質問には、実は一つの正解がない。ポモドーロ・テクニック、タイムブロッキング、フロー状態を目指す働き方は、それぞれ前提にしている作業の性質が違う。この記事では三つを並べ、どんな場面で機能し、どんな場面で逆に足を引っ張るかを整理する。
ポモドーロは着手のハードルが高いタスクや、気が散りやすい人の立て直しに向く。タイムブロッキングは複数のタスクを抱える一日全体の設計に向く。フローは高度な習熟が必要な一つの作業に長時間没入する場面に向くが、意図的に呼び出すことは難しい。三つは競合する選択肢というより、状況に応じて使い分ける道具として理解したほうが実用的である。
ポモドーロ・テクニック — 着手のハードルを下げる
ポモドーロ・テクニックは、イタリアのフランチェスコ・シリロが1980年代後半に考案した手法で、25分の作業と5分の休憩を1セットとして繰り返す※1。強みは、「25分だけ」という区切りが、着手そのものへの心理的なハードルを下げる点にある。やる気が出ない、先延ばしにしている、というタスクほど効果を実感しやすい。
一方で弱点もはっきりしている。25分は当初シリロ自身の試行錯誤で決まった長さであり、万人に最適という裏付けがあるわけではない※1。深く没入し始めたところでタイマーが鳴って作業を切り上げると、かえって流れを断ち切ってしまう。単純作業や着手が課題のタスクには向くが、じっくり没入する必要がある作業には不向きな場合がある。
タイムブロッキング — 一日全体を設計する
タイムブロッキングは、一日のスケジュールをタスクごとにブロックとして事前に割り当てる方法で、カル・ニューポートも著書『Deep Work』の中で、深い仕事の時間を確保する手段として詳しく紹介している※2。強みは、複数のタスクや会議が混在する一日全体を俯瞰して設計できる点だ。「いつ深い仕事をやるか」を事前に決めてしまうことで、その場の判断疲れを減らせる。
ただし、割り込みや予定変更が多い職種では、ブロックが計画どおりに進まないことが日常的に起きる。ブロックが崩れるたびに再設計する手間がかかるため、タイムブロッキングは比較的予定をコントロールしやすい働き方の人に向いている手法だと言える。
フロー — 没入そのものを目指す
心理学者のミハイ・チクセントミハイは、活動そのものに没入し、時間感覚を忘れるほど集中した状態を「フロー」と呼んだ※3。フローは、課題の難易度と本人のスキルが釣り合っているときに生じやすいとされる。タイマーで区切る発想とは対照的に、フローは区切らず流れに乗り続けることそのものに価値を置く。
もっとも、フローは狙って呼び出せるものではない。前提として一定の習熟と、中断されない長い時間枠が必要で、初心者が不慣れな作業でいきなりフローを目指しても再現性は低い。また、フローに入るまでの導入時間そのものが、前の作業の注意残余によって妨げられることもある※4。フローは目指す状態というより、環境と習熟が整ったときに結果として起きる状態と考えたほうが実態に近い。
どう使い分けるか
三つの方法は優劣ではなく役割が異なる。着手できずに止まっているならポモドーロ、複数タスクを抱える一日全体を組み立てたいならタイムブロッキング、一つの作業に長く深く入り込みたいなら、フローが起きやすい条件(長い時間枠・適切な難易度・中断のない環境)を整えるという発想がそれぞれ有効だ。実務では、タイムブロッキングで一日の大枠を決め、その中の一つのブロックをポモドーロで着手し、乗ってきたらタイマーを気にせず続ける、という組み合わせも珍しくない。
次の一歩
どの方法を選んでも、途中で気が散ること自体は避けられない。そこから作業に戻る手順については注意をコントロールするで扱っている。一日全体の時間割として深い仕事と浅い仕事をどう配置するかは、一日の仕事を設計するで具体的に扱う。
参考文献
- Francesco Cirillo. The Pomodoro Technique. pomodorotechnique.com
- Cal Newport. Deep Work: Rules for Focused Success in a Distracted World. Grand Central Publishing, 2016.
- Mihaly Csikszentmihalyi. Flow: The Psychology of Optimal Experience. Harper & Row, 1990.
- Sophie Leroy. "Why is it so hard to do my work? The challenge of attention residue when switching between work tasks." Organizational Behavior and Human Decision Processes, Vol. 109, No. 2, 2009.
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