デジタルの気が散る要因を減らす — 通知・スマホ・タブの設計
通知・スマートフォンの置き場所・ブラウザのタブを具体的に設計し直し、デジタル環境からの中断を減らす手順と、その限界を扱う。
気が散る要因の多くは、意志の問題ではなく環境設計の問題として扱える。特にスマートフォンや通知、ブラウザのタブは、初期設定のままだと「気が散りやすいように」作られていることが多い。ここでは通知・端末の置き場所・タブの三つを具体的に設計し直す手順と、その限界を扱う。
デジタル環境からの中断は、通知の見直し・スマートフォンの物理的な距離・ブラウザタブの数という三つの設計変数でかなりの部分を減らせる。中断1件あたりの復帰コストは決して小さくないという研究があるため、遮断の効果は積み重なりやすい※3。ただし遮断を徹底しすぎると連絡の見落としなど別のコストが発生するため、「集中ブロックの間だけ遮断する」といった時間を区切った運用のほうが現実的である。
通知を「即時」から「バッチ」に変える
ほとんどのアプリは初期状態でリアルタイム通知が有効になっている。まず行うべきは、仕事に関係するアプリを含め、バナー通知とロック画面表示を一度すべてオフにし、本当に即時対応が必要なものだけを個別に戻すことだ。メールやチャットの多くは、実際には数十分〜数時間単位でまとめて確認しても業務に支障が出ない。通知を「即時」から「決まった時間にまとめて見る」バッチ方式に変えるだけで、割り込みの回数そのものを減らせる。
スマートフォンの置き場所を変える
通知を切っても、視界にスマートフォンがあるだけで注意は分散するという指摘がある。集中ブロックの間は、机の上ではなく別の部屋、あるいは引き出しの中に置く。手の届く範囲から物理的に外すことが重要で、「サイレントモードにして裏返して置く」程度では効果が弱い場合が多い。これはカル・ニューポートが著書で紹介している「デジタル・ミニマリズム」の考え方とも重なる。テクノロジーを排除するのではなく、価値を生む使い方だけを意図的に選び取るという発想だ※1。
ブラウザのタブを設計する
タブは「後で読む」の墓場になりやすい。集中ブロックの開始時に、その作業に無関係なタブをすべて閉じる。調べ物が必要になったら、開かずにメモに書き留めて、ブロックが終わってからまとめて開く。これは前回の記事で扱った「気が散る仕組み」とも関係している。関係のないタブが開いている状態自体が、切り替えを誘発する引き金になり、切り替えのたびに注意残余とタスク切り替えコストが発生する※2※4。
気が散った回数を記録する
設計を見直しても、最初のうちは何にどれだけ気を取られているか自覚しにくい。1週間ほど、気が散った瞬間に何が原因だったかを一行だけメモする「気散らしログ」をつけると、自分にとって最大の要因が通知なのか、スマートフォンなのか、タブなのかが見えてくる。原因が特定できれば、そこだけを重点的に設計し直せばよく、全部を一度に変える必要はない。
遮断のしすぎがもたらすコスト
もっとも、デジタル遮断を徹底しすぎると別の問題が生じる。緊急の連絡を見落とす、チームの反応が遅いと誤解されるといった副作用は現実にある。一方で、常時オンの状態を維持するコストも研究で示されているとおり軽くはない※3。現実的な落としどころは、終日の遮断ではなく、集中ブロックの間だけ通知とスマートフォンを遮断し、ブロックの外では普段どおり反応するという時間を区切った運用だろう。
次の一歩
デジタル環境を整えたうえで、それでも気が散った瞬間にどう作業へ戻るかについては、注意をコントロールするで手順を扱っている。集中の時間そのものをどう作るかで迷っている場合は、目的別に方法を比較した集中法を目的別に比べるも参考にしてほしい。
参考文献
- Cal Newport. Digital Minimalism: Choosing a Focused Life in a Noisy World. Portfolio/Penguin, 2019.
- Sophie Leroy. "Why is it so hard to do my work? The challenge of attention residue when switching between work tasks." Organizational Behavior and Human Decision Processes, Vol. 109, No. 2, 2009.
- Gloria Mark, Daniela Gudith, Ulrich Klocke. "The Cost of Interrupted Work: More Speed and Stress." Proceedings of CHI 2008.
- American Psychological Association. "Multitasking: Switching costs." apa.org/topics/research/multitasking
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