パーソナルワークフローを設計する — 作業の流れを仕組みにする
繰り返し発生する作業を入力・手順・完了条件に分解し、ワークフローとして固定する方法を解説する。忙しい週でも崩れない記録の残し方もあわせて扱う。
毎週の顧客向けレポートを、都度「今回はどこから手をつけようか」と考えながら作っている人は多い。前回のファイルを探し、抜け漏れがないか記憶を頼りに確認し、最後にレビューを誰に頼むかその都度決める。作業自体は同じことの繰り返しなのに、毎回ゼロから段取りを組み直しているため、時間もかかるし抜け漏れも起きる。これはワークフローが「仕組み」ではなく「記憶」に依存している状態だ。
繰り返し発生する作業は、入力・手順・完了条件を書き出して「ワークフロー」として固定すると、毎回の段取りコストと抜け漏れを減らせる。手順は思い出すものではなく、見て実行するものにする。忙しい週でも崩れないよう、確認の粒度を粗くした短縮版の手順もあらかじめ用意しておく。
なぜ「その都度考える」が高くつくのか
繰り返し発生する作業でも、手順を頭の中にしか持っていないと、毎回「何から始めるか」「何が抜けていないか」を考え直すことになる。人はタスクを切り替えるたびに一定のコストを払っており、頻度の高い切り替えは積み重なると無視できない負担になる※1。さらに厄介なのは、記憶に頼った手順は人や日によってブレることだ。忙しい週に急いで作業すると、普段は踏んでいる確認ステップを飛ばしてしまい、あとで手戻りが発生する。個人の生産性システムにおける収集・整理・レビューの仕組みを一度作っておくと※2、この判断コストの多くは事前に片づけられる。個人の生産性システムを組み立てるで扱った考え方が、ワークフロー設計の前提にもなる。
ワークフローを設計する — 入力・手順・完了条件
ワークフローとは、決まった入力から決まった完了状態まで、同じ手順で運べるようにした作業の型だ。設計は三つの要素を書き出すところから始める。一つ目は入力。その作業を始めるために必要な材料—前回のファイル、確認すべき数値、関係者からの承認など—をリストにする。二つ目は手順。入力から完了までを、実行できる粒度のステップに分解する。「レポートを作る」ではなく「テンプレートを複製する」「先月のデータを差し替える」「数値の異常値を目視で確認する」のように、迷わず着手できる単位まで具体化する。三つ目は完了条件。何をもって「終わった」とみなすかを明文化する。レビュー依頼を送った時点なのか、相手の承認が返ってきた時点なのか、曖昧にしておくと作業が中途半端に放置されやすい。
入力: 先月分の売上データ、前回のレポートファイル
手順:
1. テンプレートを複製する
2. 先月のデータを差し替える
3. 前月比が±20%を超える項目に注記を入れる
4. 上長にレビュー依頼を送る
完了条件: 上長の承認コメントが付いた時点
記録して、忙しい週でも生き残らせる
手順を頭の中に置いたままだと、忙しい週に真っ先に省略される。短いドキュメント—メモアプリの1ページで十分—に書き出し、作業を始めるときは必ずそれを開く習慣にすると、判断を都度ゼロから行わずに済む。さらに、通常版とは別に「時間がないときの短縮版」を一つ用意しておくと、忙しい週でも手順そのものが崩壊するのを防げる。短縮版は手順を減らすのではなく、確認の粒度を粗くする方向で作るのが安全だ。異常値チェックを全項目ではなく主要指標のみにする、といった調整であれば、品質を大きく落とさずに時間を圧縮できる。
もっとも、すべての作業をワークフロー化する必要はない。初めて取り組む企画や、毎回内容が大きく変わる創造的な作業は、型にはめること自体が思考の幅を狭めてしまう。ワークフロー化が向くのは、月に何度も発生し、かつ手順の大枠が毎回同じ作業に限られる。複数の案件を並行して深く進める段階になると、個々のワークフローに加えて案件間の切り替え方も設計対象になる。この点は複数プロジェクトを深く回すで扱っている。
次の一歩
ワークフロー設計の前提となる収集・整理・レビューの土台については個人の生産性システムを組み立てるを、複数の案件にまたがる運用については複数プロジェクトを深く回すを参照してほしい。ディープワーク基礎講座では、実際の業務を題材にワークフローを書き出す演習を行っている。詳細はこちら。
参考文献
- American Psychological Association. "Multitasking: Switching Costs." apa.org.
- David Allen. Getting Things Done: The Art of Stress-Free Productivity. Penguin Books, 2001(増補改訂版 2015).
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